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とあるアフリカの小さな国の話

著者:Takumi Sano

とあるアフリカの小さな国の話

ここは何時代なのだろうか。

つい先日までアフリカの大都市ケープタウンで鉄筋の建物と騒音の中を過ごし

アフリカ最南端である喜望峰を拝めてきたはずが、ここはどこだろう?

皆さんはご存知であろうか、南アフリカの中にある小さな国レソトの存在を。

~レソト入国数週間前~

僕はエジプトからアフリカ縦断を初めて、南アフリカの喜望峰をゴールに旅をしていたところだった。旅中は何度も地図を見て、明日はどこに行くか、どのルートで行くかを決めるのが日課であった。そんなある日、南アフリカの中に小さな点線でなぞられた部分が存在することに気づいた。地図を拡大してみるとそこは国の国境であり、レソトをいう文字があった。国の中に国があるなんて思ってもいなかった。

© OpenStreetMap contributors

調べてみると [レソトでは毛布を巻いて暮らす民族が存在する。] なんだそれ、動きづらくて不便でしょ。そう思わず口に出た。

しかし調べれば調べるほどに興味が沸き絶対にいってやろうと決心を決めていた。

~レソト入国後~

都市部はそれなりに発展しており、車も走っている。毛布を巻いている人間も全然いない。

あれ、僕の思ったイメージと違う、ただの田舎、ただの日本とは違う国の都市じゃないか、
そう思った。僕は期待を裏切られて、重いバックパックを背負い次の町に向かうバスに乗ってみた。思ったより道も整備されており、なんだ、南アフリカと同じで結構栄えてしまって、伝統の毛布を纏う民族は消えてしまったのだろうか、なんて考えていた。

するとどうだろう1時間、2時間と時間がたつにつれ鉄覆われた冷たさを感じる建物はすっかり消えていき、なにかこう温かみのある建物がぽつぽつと目につくようになってきた。

突然訛りの強い英語で [到着したぞ。] と声をかけられた。いつの間にかバスの中で眠ってしまっていた。携帯、財布、パスポート、荷物があるかを確認し、重い腰をあげてバスの外に出てみた。あれ、ここはどこだろう、いや、何時代だろうか、数時間前との景色のギャップに僕はバスじゃなくタイムマシンに乗ったのかと思った。

町に着いてまず宿を目指した。そうすると何人かの服装が明らかに違う事に気づいた。

そう、毛布を纏っているのだ。これだ!これを見たかったんだ!


車ではなく馬を交通手段に使いあったかそうな毛布に包むれている人間に感動した。あぁなんて美しい民族なのだろうか、
自分が着ている服がすごく惨めに見えた。今すぐあの毛布が欲しい。けれど売っていない。

そうだとりあえず持っているブランケットを巻いてみようと思った。

するとどうだろう、あの時はかっこいいと思っていたのに今こうやって文を書いている際に見たらすごくかっこ悪い。旅とは人の感性も変えるものだとつくづく思う。

レソトでは数日間しかいなかったが、数日が何週間にも思える位時の流れがゆっくりだった。時間に気をとられている人間は殆どいない。バスだって人が集まるまで出発しないし、なにせ基本移動は馬だ、馬が疲れていたら目的地に着くのだって何時になるかわからない。待ち合わせの時間なんて成立するのだろうか。

けれどそんなことも考える必要のないくらいレソトには壮観な景色がどこを見ても目に入ってくる。

全然知らなかった国をこんなにも好きになるなんて思ってもいなかった。

伝統のレソトマント買って馬に乗ってどこまでも続きそうな平地を、何も騒音のない音のない世界を僕は旅していた。

僕は滞在中ずっと思っていた。
日本も発展する前はこのくらい平和で長閑な場所があったのだろうか、

今では一分一秒正確に発着する電車、通りゆく人たちは時計に何度も目をやる生活。不便はないが心苦しさが残る国。でもレソトは僕たちの感覚で言うと不便だろう。車なんて町に一台あったら良いほう、夜になったら勿論街頭なんてない。

けれど彼らはそれを不便とは思わないのだろう。
そうやって暮らしてきているのだから。僕たちが勝手にその暮らしを不便と決めつけるのは大変おこがましいことで、もし発展してしまったら今の長閑な暮らしは二度と取り戻せないのだろう。心が豊かなレソトの人は毛布に包まれる外国人の僕をみて、笑顔であいさつをしてくれる。言葉は通じないけどきっとこう言っていのだろう。「お前マジサイコー」。

著者について

Takumi Sano author